4号対空戦車 オストヴィント (4号戦車G型車体) (安田征策)

4号対空戦車 オストヴィント (4号戦車G型車体) (安田征策)の画像

車体前面より~ツィメリットコーティングはパーツのまま

4号対空戦車 オストヴィント (4号戦車G型車体)

<「オストヴィント」と「4号車体」について>

「オストヴィント」は、同じ「4号戦車」をベースにした対空戦車「ヴィルベルヴィント」の火力強化型にあたります。
口の悪いエムズの店長は「ヴィルベルヴィント最強!」と断言していて、確かに4連装の機関砲を搭載した「ヴィルベルヴィント」に対して「オストヴィント」は単装式と、素人目には火力が弱そうな印象を受けます。
しかし、「ヴィルベルヴィント」が搭載している「37mm機関砲 Flak43」は大変優秀な機関砲でして、低伸弾道性能と有効射程、発射速度に優れ、大口径の機関砲としては最良の兵器でした。もちろん、威力は「20mm機関砲」とは比べものにならない程の破壊力を誇り、装甲板を装備していた連合軍の戦闘爆撃機に対して充分な対空能力を持っています。
また、その長いリーチを活かして対地攻撃を行う戦闘爆撃機に対して有利な戦いを展開することが可能です。「ヴィルベルヴィント」の実車写真では、撃ち合いによって撃破されてしまったシーンを良く見かけますが、「オストヴィント」の場合は戦闘爆撃機が機銃掃射を開始する前に有効弾を射撃することができますので、その分優位に立つことができました。

<「オストヴィント」の「試作型」と「量産型」>

さて、「オストヴィント」の試作車が完成したのは「ヴィルベルヴィント」と同じ1944年の夏で、この頃における展示風景が「オストヴィント」の写真として有名です。
イタレリやトランペッターのキットを作った人はお分かりになると思いますが、この「オストヴィント」の試作車は巨大な「37mm機関砲 Flak43」(ただし、このクラスの機関砲としてはコンパクトなサイズ)を搭載するには砲塔のスペース的に無理があったようで、量産型ではターレットリングが拡大、砲塔形状は前方下部が膨れたものへと変更されています。
ところが、このターレットリングの拡大は必然的にターレットリング径を拡大させた専用の車体を必要とし、これは大戦後期において生産車両の種類を減らして個々の生産数を上げようとしていた生産現場にとって忌々しき事態を招いてしまい、その生産数は極僅か(おそらく7両)にとどまりました。

<「4号対空戦車 オストヴィント G型車体」のキットについて>

「オストヴィント」の「量産型」の姿が明らかになったのは極最近のことで、「試作車」を再現したものとしては前述のイタレリとトランペッターのキットが存在していたものの、「量産型」のキット化は2012年に発売されたサイバーホビーの「ドイツ 4号対空戦車 オストヴィント (No.6550)」が初めてとなります。
今回、サイバーホビーから発売された「4号対空戦車 オストヴィント w/ツィメリットコーティング (No.6746)」は「試作車」を再現したキットのようで、車体はツィメリットコーティングが施された「4号戦車G型」となっています。
しかし、キットに含まれているパーツは砲塔は前方下部が膨らんだ「量産型」なんですよね…。

パッケージタイトルには「試作型」とは表記されていませんから、量産型の一つの形態として「4号戦車G型」の車体を使用した車両と考えることはできます。
ところが、ターレットリング径が異なる砲塔と車体の組み合わせっていうのは実際には無理です。ターレットリングは車体の基本構造となりますので、模型みたいに削って拡大させることはできず、変更するには製造工程時から行わなくてはなりません。まして、既存の「4号戦車」の車体に量産型の砲塔を載せることが可能だったならば、ターレットリング径を大きくした専用車体を用意する必要はないでしょう。
このことから、私的にはこの組み合わせは実在しておらず、「試作型」の雰囲気を味わうキットではないかと思います。
しかし、大戦末期のドイツ軍の車両はまだまだ分からないことも多く、最近では「3号戦車」の車体に「オストヴィント」の「量産型」の砲塔を搭載した対空戦車の存在も認められたようです。ドラゴンのリサーチ力は個人の力を大きく越えるものでしょうから、実は私が知らないだけで、このキットのような車両も存在したのかもしれませんね。

4号対空戦車 オストヴィント (4号戦車G型車体) (安田征策)の画像

ターレットリングと車体の関係を考えるとキリがないのでキットのままで


<では、この「オストヴィント (No.6746)」をどのように料理するのか?>

以上のような事情を踏まえ、ここからは、この「オストヴィント (No.6746)」のキットを「オストヴィント」の「試作型」と解釈して製作し解説することにします。
「試作型」は、ツィメリットコーティングが施された「4号戦車G型」をベースとしており、本キットのパーツにはこのコーティング再現として凸凹とモールドされています。
ツィメリットコーティングを再現する方法としては、ポリパテブレード方式やエポパテローラー方式などがありますが、どの方式でも結構な手間が掛かるのは事実です。会社から帰宅した後の2、3時間という短い時間ではコーティングを綺麗に刻むのは無理で、ある程度まとまった時間が必要なことから、たとえ技量を伴っていたとしても作業に入るのに躊躇してしまいます。ですから、このコーティング加工済みというキットはかなりポイントの高いものです。
また、砲塔装甲板の薄さやその内外に渡る繊細な溶接跡の彫刻、砲身のフラッシュハイダーの穴の再現など、なかなか秀逸な表現力を持ったパーツとなっています。
「オストヴィント」の「試作型」のようなワンメイク車両を正確に再現することは、バリエーションでキット展開を考慮するメーカーサイドからは難しいことで、それも生産月によって微妙に仕様が異なる「4号戦車」系列はかなりの難物です。前述の「試作型」を再現したイタレリとトランペッターの両キット共に、実車とは少なくない差異がありますから、砲塔形状の違いだけでこのキットの価値を低くすることはできないでしょう。
作例では、できるだけ「試作型」に準じた工作を行いながらも、キットパーツを尊重した仕上がりを目指しています。

4号対空戦車 オストヴィント (4号戦車G型車体) (安田征策)の画像

砲塔内部~Flak43は違和感なく納まるもののフィギュアが欲しいところ

<オストヴィント~砲塔の作製>

砲塔は、前後分割という大胆な分割方法で装甲板の薄さと溶接跡とを再現しています。ただし、装甲板の薄さから接着面積が少ないので、接合部分にズレが生じないように組立てには注意が必要です。
砲塔内部は座席のみが再現されていますが、おそらく「ヴィルベルヴィント」と同様に砲弾ラックが存在していたと思われます。「オストヴィント」の砲塔内部の資料は見たことがありませんので、メーカーとしてもどうしようもなかったのでしょう。作例では予備の砲弾クリップを内部側面に配置しておきました。
砲身は、一体成型によってフラッシュハイダーとその後部の穴が開口処理されているという成型技術の高さを感じるものとなっています。キットの表現のままでも十分なのですが、砲口の内側を少し削り、よりシャープさを演出しています。
機関砲本体は、基本的にストレート組みですが、説明書に記載されているような砲身を上下可動式とすることは照準器の取り付けの関係から難しそうです。
機関砲の排莢ネットはエッチングパーツが用意されています、このネットは確かイタレリとトランペッターのキットには枠自体も付属していなかったと記憶していますので、ここもポイントが高いですね。

4号対空戦車 オストヴィント (4号戦車G型車体) (安田征策)の画像

車体側面~予備転輪の取付位置を変更、OVMの設置は毎度苦労します

<オストヴィント~車体の製作>

車体は、ドラゴン/サイバーホビーの「4号戦車」の「後期型」シリーズと基本的には同じです。同戦車の「初期型」よりはパーツ数が抑えられていますが、組み立てには一苦労します。
車体内部には、エンジンルームとの隔壁と戦闘室内部の上部の桁のパーツが用意されているものの、このパーツを取り付けると車体上部が嵌らなくなりますので、取り付けないか、パーツの上部を削り取ります。

戦闘室の前面パネルは追加装甲付きが指定されていますが、試作型では追加装甲が付いていない状態で、コーティングが施されています。
キットには余剰パーツとしてコーティング加工済みの追加装甲が付いていないパーツが付属しています。ただし、このパーツは80mmの装甲厚となった「4号戦車H型」用のものですから、「G型」としては使用できず、キットの指定の通りに追加装甲を付けた状態としました。
車体最前部の追加装甲板は、説明書にはコーティング加工を施したパーツを使用することが指示されていますが、実車はこの部分にコーティングは行われていませんので、コーティング加工のない余剰パーツを使用しています。

操縦手ハッチと前方機銃手ハッチは、余剰パーツを利用して円形の小型ハッチを装備したタイプへと変更しました。ヒンジはプラ材でスクラッチしています。

予備転輪ラックはキット指定の車体後部へと装着するタイプではなく、通常の車体側面に装着する方式へと変更。その車体後部には牽引ワイヤーを装着するためのステーを追加しました。

キャタピラは、DS素材によるベルト式履帯が付属しています。このベルト式履帯は、表面にハの字の滑り止めパターンが付いた後期型タイプとなっていますが、実車では滑り止めパターンの無い中期型タイプを装着しています。また、ドラゴン/サイバーホビーの履帯は若干肉薄なのが気になっていましたので、履帯は中期型タイプの履帯を再現したタミヤの「4号戦車H型」のベルト式履帯へと変更しました。これはキットの予備履帯に合わせたためで、実車の履帯はセンターガイドに肉抜き穴が付いたものとなります。

4号対空戦車 オストヴィント (4号戦車G型車体) (安田征策)の画像

排気管のサビ表現は剥がし技法にチッピング

<オストヴィント~塗装>

基本塗装は、タミヤカラーのアクリル塗料を使用。
・ ダークイエローの部分は デザートイエロー(XF59):XF60ダークイエロー(XF60):フラットホワイト(XF2)を「1:1:2」で混色
・ ダークグリーンの部分は、オリーブグリーン(XF58)に上に混色したダークイエローを混色
・ レッドブラウンの部分は、レッドブラウン(XF64)に上で混色したダークイエローを混色
したカラーで塗装しています

基本塗装が完了したら、薄くシャドー吹きとハイライト吹きを実施。その後、塗装の剥がれを描いて行きました。
排気管の塗装の剥がれは、最初に錆の色を塗っておき、GSIクレオスのMr.シリコンバリアーを塗布。その後に基本塗装を行い、実際に剥がす方法としています。
機関砲の砲身は、GSIクレオスのMr.メタルカラーのダークアイアン(C-214)を塗り、乾燥後に磨いて光沢を出しました。

アクリル塗装などの工程が完了したら、使用する塗料をエナメル塗料へと変更。ウォッシング、細部の塗り分け、そして油彩によるフィルタリングなどを行いました。
最後に、足周りを中心としてピグメントにより土汚れを表現。履帯の光沢部には先程のダークアイアン(C-214)を塗って仕上げています。


4号対空戦車 オストヴィント (4号戦車G型車体) (安田征策)の画像

車体後方より~3色迷彩は時間をかけて自然な感じで仕上げます

<何の因果か?3作目のオストヴィント…>

実は、以前模型誌の作例で、イタレリとトランペッターの両キットを製作したことがあります。どちらもニューキットレビュー的な作例ではなく、フルディテールアップによって「オストヴィント」の「試作型」を実車に「忠実」に再現した内容でした。
この「忠実」というのがほんとうに曲者でして、どちらのキットも細部に至ると実車とは異なる箇所があり、他のキットのパーツなどを流用してかなり大変だったと記憶しています。まあ、イタレリのキットは、車体部分は古い「4号戦車F型/G型」からの転用でしたので、手が掛かるのはやむを得ないことなのですが。
しかし、さすがに1両しか作られていない車両を3つも製作するのは気が引けますね。その経験から言わしてもらうと、このサイバーホビーのキットは一番手が掛からないものでした
もっとも、ドラゴン/サイバーホビーの特有の癖があるのも事実で、説明書に間違いがあるのはもちろん、取り付け指示の分かり難さ、一部パーツが用意されていないことや、使用されているプラの材質に起因するゲート部分の切断面の荒れなどの欠点も挙げられます。それを考えると、資料無しでこのキットに挑むのは少々難しいですね。
良くも悪くも、ベテランユーザー向きのキットかな?と思います。


【 製作概要 】

 


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